乳腺炎の原因は食事ではなかった!乳腺炎を予防するために気をつけるべきこととは?
乳児健診での保健指導や母乳外来では、「乳腺炎の予防のためにも、食事に気をつけて」と指導されることが多いものです。それを受けて、食事制限をしながら母乳育児に励むママも少なくないことでしょう。
ですが、ママの食事内容に問題があるから乳腺炎が発症するというのは、科学的に解明された見解ではありません。母乳がつくられるメカニズムや、乳腺炎の原因について理解を深めることで、こうした通説に振り回されずに済みます。
そこで今回は、母乳がつくられるしくみや、食事以外の乳腺炎の原因と症状、種類、予防方法について、お話しします。正しい知識を持つことで、余計な心配を減らしてくださいね。
乳腺炎と食事は関係ない! 神経質になりすぎないで
母乳は血液から出来ていると聞くと、お母さんが摂取した物がそのまま影響するように感じますよね。ですが、実際はそんなことはありません。
何故かと言うと、食べ物は一度消化の過程を経てから、血液を介して全身に運ばれるからです。
そしてその際に吸収された栄養素やタンパク質、白血球が乳腺に取り込まれ、母乳となります。それに、乳管は脂肪の粒よりずっと太いので、それが原因で詰まることはありません。
赤ちゃんに栄養を届けることを考えると、栄養バランスのとれた食事をするのは基本ですが、食べたいものを無理に我慢する必要はないということです。
食事以外が問題なら考えられる乳腺炎の原因って何?
乳腺炎も、いくつかの種類に分かれます。その病名と症状の違いについて、説明しておきましょう。
病名と症状
まずは乳腺炎の種類とその症状について説明します。
急性うっ滞性乳腺炎
授乳する際に十分に母乳が排出されないことで、乳汁が乳腺内にたまることで炎症が起こった状態を、「急性うっ滞性乳腺炎」と言います。
症状としては、乳房が大きく腫れる、乳房が張る、押すと痛みがあるなどがあげられます。
手当せずにそのまま放置をすると、「急性化膿性乳腺炎」まで進んでしまうことがあるので、注意が必要です。
急性化膿性乳腺炎
急性化膿性乳腺炎は、母乳を飲ませる時に乳頭や乳輪に傷ができ、そこから細菌感染することで起こります。原因菌は、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などです。
悪化すると乳房だけでなく、わきの下のリンパ節が腫れたり、痛むことがあります。また、38~40度の熱が出るママも少なくありません。場合によっては、抗菌剤を処方されることもあります。
さらに化膿が潰瘍化した場合は、病院で針を刺す、あるいは切開して、膿を出す治療を行います。急性化膿性乳腺炎が疑われたら、一度診察を受けましょう。
乳腺炎の原因
上記で説明した乳腺炎には何が原因でなってしまうのでしょうか?詳しく紹介していきましょう。
授乳間隔にバラつきがあると、乳房でつくられる母乳の量と、赤ちゃんが飲む量がアンバランスになり、飲み残しが多くなります。
残った母乳を絞らずに放っておくと、乳腺内にたまって、炎症を起こしやすくなるので覚えておきましょう。
新生児は特に、母乳の飲み方がうまいわけではありません。それに加えて、赤ちゃんが飲む母乳の量が少ない、哺乳力が弱いという条件が重なると、母乳が残ってしまうのです。
月齢が進むにつれて、上手に飲めるようになっていきますが、それまでは乳腺炎が起こりやすい状況にあると認識しておきましょう。
授乳時の姿勢が悪かったり、実際のサイズより小さめのブラジャーをつけていると、乳房が圧迫されてしまいます。
それが、乳腺炎が発症する引き金になることもあるのです。授乳期には専用のブラジャーを使い、乳房にかかる負担を減らしましょう。
ママの中には、母乳の分泌がとてもよく、授乳間隔が少しでも開くと、とたんに乳房が張ったり、痛みを感じたり、もれてきてしまう「溜まり乳」という状態になるひともいます。
そのため、乳腺に母乳が詰まってしまい、炎症を引き起こすのです。その場合は、飲み残した母乳を絞って捨てる方が、乳腺炎になりにくくなります。
負担のかかる姿勢で授乳をしていると、乳房が圧迫されて乳腺炎につながってしまうことがあります。
また、授乳は横抱きでしかしない、添い乳ばかりするなど同じ姿勢を続けていると、乳腺の中でも母乳が出ていく部分と残る部分に分かれてしまい、そこに母乳が溜まってしまいます。
授乳の際には、赤ちゃんの飲みやすさだけでなく、飲み残しがない姿勢になっているかどうかも、気をつけましょう。
乳腺炎を防ぐにはどうしたらいい?
乳腺炎になるのは、ママにとっても、赤ちゃんにとっても辛いものです。それを予防するためにも、心がけてほしいことがあります。
授乳間隔をバラバラにしない
授乳間隔が同じになるように配慮することです。授乳間隔が均等になると、ママが母乳をつくるタイミングや量が、赤ちゃんが求めるものと合ってきます。赤ちゃんに母乳を飲み切ってもらうことが、乳腺炎の予防に役立つのです。
授乳姿勢を変える
乳腺によって母乳の出方に違いがないよう、授乳姿勢や赤ちゃんの向きを意識したり、乳房をマッサージして乳管を開通させるのもおすすめです。
授乳姿勢は、横抱きやラグビー抱き、縦抱きなど、1日の中でも変えるのがベストです。もし、赤ちゃんが母乳を飲み残してしまった時には、絞って排出させるという方法もあります。
漢方薬で体を温める
実は、漢方薬を飲むことでも、乳腺炎が予防できることが知られています。効果があるのは、「葛根湯」です。
葛根湯は、風邪の初期症状がある時に飲む漢方薬という印象が強いですが、実際には身体を温め、熱や腫れ、痛みなどを発散させる役割を担っています。
また、葛根という生薬は、乳汁の分泌を促す働きも併せ持っているのです。葛根湯に含まれる芍薬には痛みを抑え、血液を補う作用もあるので、乳腺炎の予防にも効果を発揮してくれます。
ただし、赤ちゃんに影響が出ないように、産婦人科で処方してもらうか、薬局あるいはドラッグストアにいる薬剤師に相談したうえで、用法・用量を守って飲むのが基本です。
体質的に漢方薬が合わないひともいるので、飲んでから不快な症状があらわれた時には飲用を中止して、病院を受診しましょう。
授乳姿勢が大切! 日々の心がけで乳腺炎を予防しよう
乳腺炎は、授乳する姿勢や間隔に気をつけることで、予防することができます。
これまで紹介した予防法以外にも、意識して水分補給を行う、血行促進のためにシャワーではなく入浴する習慣をつけるなど、さまざまな方法があります。
飲みものも冷たいジュースよりは、白湯や温かくてノンカフェインのお茶の方が、赤ちゃんのためにもよいです。
また、疲れや体調不良などが誘因となって、乳腺炎が起こることもあります。乳房に違和感がある時には、悪化する前に授乳方法を変えたり、マッサージするなどして、乳腺炎の悪化を防ぎましょう。
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